小国町誤射事件は2023年4月に発生してから、現在まで約2年7ヶ月にわたって様々な展開を見せています。この記事では、小国町誤射事件の発生経緯と詳細を時系列で整理し、事故当日の状況から現在進行中の裁判まで、分かりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- 2023年4月9日の事故当日の詳細な状況
- 事故後の警察捜査と書類送検の経緯
- 被害者から町への提訴とその後の展開
- 町から加害者への求償権行使の決定過程
- 現在進行中の2つの裁判の争点
【2023年4月9日】事故発生当日の状況
クマ駆除のため14人が山に入る
2023年4月9日(日曜日)の昼頃、山形県小国町黒沢の山林で、小国町誤射事件は発生しました。
当日、猟友会のメンバー合わせて14人が山に入り、町から委嘱を受けた鳥獣被害対策実施隊としてクマの駆除活動を行っていました。報道によると、被害者の男性は「他の隊員2人とともに3人で山に入った」とされており、14人の大規模なグループの中で、小グループに分かれて活動していたものと考えられます。
誤射の瞬間
加害者の58歳の男性(当時)がライフル銃を1発発射したところ、弾が一緒に猟をしていた当時42歳の男性の右膝に命中してしまいました。
警察の調べによると、加害者は**「周囲の安全を確認したうえで発射すべき注意義務を怠って、漫然とライフル銃を発射した」**とされています。クマが現れた際に発砲したとみられますが、仲間がいる方向をきちんと確認せずに撃ってしまったようです。
被害者の負傷状況
被害者の男性は、右太ももを骨折し、右膝を負傷しました。さらに深刻なのは、右膝の関節が動かしにくくなるなどの後遺症が残ったことです。現在も後遺障害を抱えており、日常生活に大きな支障をきたしているとされています。
【2023年4月~2024年5月】警察による捜査期間
約1年間にわたる警察の捜査
事故発生後、警察は業務上過失傷害の疑いで捜査を開始しました。加害者の男性は容疑を認めており、警察は約1年間かけて事故の状況や責任の所在について詳しく調べました。
2024年5月24日:加害者を書類送検
2024年5月24日、警察は捜査を終えたとして、小国町に住む58歳の会社員男性を業務上過失傷害の疑いで山形地検米沢支部に書類送検しました。
2024年5月28日には、この書類送検の事実が報道されています。加害者は容疑を認めており、「周囲の安全確認を怠った」ことが重大な過失として認定されました。
【2025年6月】被害者が町を提訴
被害者から町への損害賠償請求
事故から約2年2ヶ月が経過した2025年6月、被害者の男性は小国町を相手取って、約3000万円の損害賠償を求める訴訟を山形地方裁判所に提起しました。
被害者側の主張の要点は以下の通りです:
- 町が誤射した男性を隊員として委嘱した責任がある
- 発砲した元隊員が「基本的な注意義務を怠った」
- 町には適切な人物を選任し、安全な環境を提供する義務があった
- 後遺障害が残る重傷を負い、慰謝料が必要
被害者は後遺障害により仕事や日常生活に大きな制約を受けており、補償が不十分だとして町の責任を追及する形となりました。
【2025年9月16日】第1回口頭弁論開催
裁判が正式にスタート
2025年9月16日、山形地方裁判所で被害者対町の損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が開かれました。
この日、被告の小国町側は主張を示した答弁書を提出し、原告の訴えの棄却を求めて争う構えを見せました。町側は、委嘱した責任はあるものの、全面的な賠償責任を負うべきではないという立場をとっています。
報道によれば、町側は「11月の次回期日で主張を詳しく述べる」としており、慎重に訴訟対応を進めている様子がうかがえます。
【2023年~2025年】町から被害者への補償支払い
町が支払った補償金の内訳
小国町は事故発生後から被害者に対して、補償金や治療費として合計1663万円あまりを支払っています。
この内訳には以下のようなものが含まれると考えられます:
- 治療費
- 入院費用
- 休業補償
- 後遺障害に対する補償金
しかし、河北新報の報道によれば、被害者の休業補償は**「1日たった2388円」**という非常に少ない金額でした。これは町が鳥獣被害対策実施隊の報酬から算出したもので、危険な業務に対する補償としては極めて不十分だという批判が出ています。
【2025年12月10日】町議会で求償権行使を議決
町から加害者への提訴を決定
2025年12月10日、小国町議会で重要な議案が審議されました。町は、被害者に支払った1663万円について、加害者の元隊員と保険会社を相手取って求償する訴訟を起こす方針を提案し、この関連議案が可決されました。
国家賠償法に基づく求償権
この決定の法的根拠は、国家賠償法にあります。もし裁判で「加害者の重過失」が認められた場合、町には国家賠償法に基づいて、被害者への支払いを肩代わりした分を加害者に請求する「求償権」が生じます。
つまり、町の論理は以下の通りです:
- 被害者が町を訴えているため、町は一旦補償金を支払った
- しかし、事故の原因は加害者の重過失にある
- 裁判で重過失が認められれば、その分を加害者に請求できる
- したがって、加害者と保険会社に1663万円を請求する
【2025年12月~】町から加害者への提訴予定
近日中に提訴へ
町議会での議決を受けて、小国町は近日中に提訴する方針です。訴訟の相手は以下の2者となります:
- 誤射した元隊員(加害者本人)
- 保険会社
この訴訟では、求償金1663万円の支払いを求めることになります。
現在の状況:2つの裁判が同時進行
複雑な三者間の法廷闘争
2025年12月現在、小国町誤射事件をめぐっては、2つの裁判が同時進行する異例の事態となっています。
| 裁判 | 原告 | 被告 | 請求額 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| 第1の裁判 | 被害者 | 小国町 | 約3000万円 | 2025年9月に開始、町は争う構え |
| 第2の裁判 | 小国町 | 加害者・保険会社 | 1663万円 | 近日中に提訴予定 |
最大の争点:「重過失」の認定
両方の裁判において、「誤射した隊員の重過失が認められるか」が最大の争点となっています。
- 重過失が認められた場合: 町は加害者に求償できる(第2の裁判で町勝訴の可能性)
- 重過失が認められなかった場合: 町が全面的に責任を負う可能性(第1の裁判で被害者有利)
つまり、第1の裁判の結果が第2の裁判にも大きく影響する構造になっています。
事故発生からの完全タイムライン
小国町誤射事件の発生経緯を、時系列で一覧表にまとめました。
| 時期 | 出来事 | 詳細 |
|---|---|---|
| 2023年4月9日(日)昼頃 | 誤射事故発生 | 小国町黒沢の山林で、猟友会14人がクマ駆除中、58歳男性が発砲し42歳男性の右膝に命中 |
| 2023年4月~2024年5月 | 警察が捜査 | 業務上過失傷害の疑いで約1年間捜査 |
| 2024年5月24日 | 加害者を書類送検 | 山形地検米沢支部に書類送検、容疑を認める |
| 2023年~2025年 | 町が被害者に補償 | 治療費、補償金など合計1663万円を支払い |
| 2025年6月 | 被害者が町を提訴 | 約3000万円の損害賠償を求めて山形地裁に提訴 |
| 2025年9月16日 | 第1回口頭弁論 | 町側は答弁書を提出し、訴えの棄却を求める |
| 2025年12月10日 | 町議会で議案可決 | 加害者への求償訴訟の関連議案を可決 |
| 2025年12月~ | 町が加害者を提訴予定 | 加害者と保険会社に1663万円を請求する訴訟を提起予定 |
事故当日の状況:なぜ誤射は起きたのか
14人での大規模な駆除活動
報道から分かる事故当日の状況をまとめると:
- 参加人数: 猟友会メンバー14人(大規模なグループ)
- 小グループでの行動: 被害者は「他の隊員2人とともに3人で山に入った」
- 発砲の瞬間: クマが現れた際、加害者が発砲
- 安全確認の不備: 周囲に仲間がいることを十分確認せずに撃った
14人もの大人数で山に入っていたため、全員の位置を常に把握することは困難だったと推測されます。しかし、それゆえにより慎重な安全確認が必要だったはずです。
「漫然と発砲」という重大な過失
警察の調べでは、加害者は**「周囲の安全を確認したうえで発射すべき注意義務を怠って、漫然とライフル銃を発射した」**とされています。
この「漫然と」という表現は、法律用語として重要です。単なる不注意ではなく、当然行うべき確認を怠ったという意味で、重過失と認定される可能性があります。
被害者の現在:後遺障害との闘い
深刻な後遺症
被害者の男性は事故から2年以上が経過した現在も、以下のような後遺障害を抱えています:
- 右膝の関節が動かしにくい
- 日常生活に支障
- 仕事に制約
- 精神的苦痛
不十分な補償への不満
河北新報の報道によれば、被害者は「1日たった2388円」という休業補償に強い不満を持っており、危険度の高い公務に対する補償の充実を訴えています。
これは鳥獣被害対策実施隊の報酬が非常に低いことに起因しており、制度的な問題として注目されています。
今後の展開と注目ポイント
裁判の焦点
今後の裁判では、以下の点が争点となります:
- 加害者の「重過失」が認められるか
- 町の委嘱責任はどこまで及ぶか
- 適切な補償額はいくらか
- 保険会社の支払い義務はあるか
地域への影響
この事件が全国に知れ渡った結果、小国町は来年度(2026年度)のクマ駆除委託の応募がゼロになったという情報も伝えられています(2025年12月時点)。
ハンターたちは「事故が起きたら全責任を負わされる」と感じており、危険な業務を引き受けることに強い抵抗感を持っているようです。
まとめと今後の課題
小国町誤射事件の発生経緯と詳細を時系列で見てきましたが、この事件は単なる事故にとどまらず、以下のような深刻な問題を浮き彫りにしています:
制度的な課題
- 鳥獣被害対策実施隊の補償が不十分
- 事故発生時の責任の所在が不明確
- ハンター不足がさらに深刻化する懸念
三者それぞれの立場
- 被害者: 後遺障害を負い、不十分な補償に苦しむ
- 加害者: 全責任を負わされる可能性に直面
- 町: 板挟みとなり、2つの裁判を抱える
今後の見通し
2つの裁判は今後も継続し、最終的な決着までには数年を要する可能性があります。「重過失」が認められるかどうかが、すべての鍵を握っています。
また、この事件をきっかけに、全国的に鳥獣被害対策実施隊の制度改革や補償の充実が議論されることが期待されます。
情報源:
- 産経新聞、TBSニュース、さくらんぼテレビ、YTS山形テレビ
- 日本テレビ系列、NHKニュース
- 河北新報、下野新聞、東奥日報、山陽新聞
- 共同通信配信記事
※本記事は2025年12月11日時点での公開情報に基づいて作成しています。裁判は現在進行中であり、今後新たな事実が明らかになる可能性があります。


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